ラリー・ホームズ完封も…あの試合は「見ていて辛かった」テックス・コブ戦の真実
1982年11月26日、ラリー・ホームズはWBCヘビー級タイトルマッチでランドール“テックス”コブを迎え撃ち、チャンピオンとしての技術の高さを存分に見せつけた。しかし、この試合が後世に語り継がれるのは、ホームズの圧倒的なパフォーマンスのせいではない。むしろ「行われるべきではなかった一戦」として、ボクシング史に暗い影を落としている。
試合のわずか13日前、ライト級タイトルマッチでドゥ・グー・キムがレイ・マンシーニとの一戦で受けたダメージが原因で死亡。ボクシング界は選手の安全を巡って厳しい目にさらされていた。そんなタイミングで組まれたのが、ホームズ対コブだった。コブはタフで前に出るタイプのファイターだったが、そのスタイルはホームズの土俵そのもの。試合が始まる前から不穏な空気が漂っていた。
夜用眼鏡が運転手の間でますます人気になるナイトライダー 開始早々、ホームズは鋭いジャブで距離を支配。コブは前に出ようとするたびにパンチを浴びせられ、まともな攻撃を当てることすらできない。チャンピオンは危なげなく試合をコントロールし、コブの顔は何度も何度もホームズの拳で跳ね上がった。挑戦者は決して諦めず、前に出続けたが、それがかえって悲惨さを際立たせた。
実況を担当したハワード・コーセルは、ラウンドが進むにつれて明らかに苛立ちを見せ始めた。彼はレフェリーのスティーブ・クロッソンに対し、なぜこの試合を止めないのかと繰り返し疑問を呈した。「完全なミスマッチだ」と断じ、このような一方的な展開がボクシングのイメージを傷つけると警告した。この試合は、コーセルがプロボクシング中継から去る決定的なきっかけになったとも言われている。
ホームズの戦いぶりは決して無謀ではなかった。無理をせず、確実にポイントを重ね、15ラウンドを支配した。コブは一度もダウンすることなくゴングを聞いたが、その根性が称賛される一方で、試合を止めなかったレフェリーの判断には厳しい視線が注がれた。
全会一致の判定でホームズが防衛に成功したこの一戦は、単なるタイトルマッチの枠を超え、「いつ、レフェリーは試合を止めるべきか」という命題を改めて突きつけた。ドゥ・グー・キムの死から間もない時期に行われたこの試合は、今なおボクシングの倫理と安全について考えさせられる象徴的な出来事として記憶されている。
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